保護されている自然

多くの自然保護地域と、希少かつ多様で比較的保存状態の良い自然の姿から、クロアチアは自然の見どころに恵まれた国であることがわかる。その中にはプリトヴィツェ湖のように世界的にも有名なものもある。

天然資源を保護する最初のクロアチアの法規制は、トロギル、コルチュラとドゥブロヴニク地域での森林伐採が制限された13世紀に遡る。専門性に基づく自然保護活動は19世紀末に始まっている。

自然保護法に基づき、空間保護の9つのカテゴリーが定義されており、最も美しく、最も価値のある保護地域は二つの厳正保護区、8つの国立公園と12の自然公園として保護されている。

Zaštićena priroda
保護されている自然
ロジャンスキとハイドゥチュキ・クコヴィ厳正自然保護区は北ヴェレビット国立公園の一部
Nacionalni park Plitvička jezera
1949年に指定されたプリトヴィツェ湖国立公園はクロアチア最古の国立公園であり、1979年にユネスコの世界遺産リストに登録された。
1985年に指定されたスクラディンスキ・ブクはクルカ国立公園の滝の一つである。そこでは、ニコラ・テスラの発明により、ヨーロッパ初の水力発電所が建設された。

かけがえのない自然を含むゴルスキ・コタル地方のビエレ・スティエネとサマルスケ・スティエネと、北ヴェレビット国立公園のハイドゥチュキとロジャンスキ・クコヴィは厳正保護区の二つである。

国立公園は広大で、一つ以上の生態系が保存されている、おおむね変化のない地域を含んでいる。プリトヴィツェ湖国立公園とクルカ国立公園の特徴は、独特なカルストの地形と水資源、そして壮大な石灰華の滝と湖である。コルナティとムリェトは独特の景観と豊富な水中生態系を誇る国立公園である。ブリユニも複数の島々から構成されているが、そこには手の入れられた公園や古代からの貴重な文化・歴史的遺産もある。リスニャク、パクレニツァと北ヴェレビットは、多くの石灰岩や深い峡谷、高地にある牧草地と広大な森林複合体の典型的な地勢としての特徴を持ち、固有種が生息している山岳地帯である。

ムリェト国立公園(1960年設立)
ブリユニ国立公園(1983年設立)、東ローマ帝国のカストルム
リスニャク国立公園(1953年設立)
パクレニツァ国立公園(1949設立)

自然公園は、重要な生態学的特徴を持ち部分的に人の手が入った地域で、そこでは特定の経済活動が許可されている。12の自然公園のうち、ヴェレビット山、ディナラ山、ビオコヴォ山、メドヴェドニツァ山、パプク山、ウチカ山、ジュンベラック-サモボル高原の7つが山地にある。テラシュチツァ島とラストヴォ島は、広範囲の陸地と海洋生物の多様性を誇る群島公園である。コパチュキ・リットとロニスコ・ポリェは低地・氾濫原であり、動物の希少種の生息地で、独自の民俗建築も有している。ヴラナ湖は、鳥類の営巣と越冬に特に重要な場所である。

ザグレブ近郊のツルナ・ムラカ鳥類保護区
バラニャにある、1967年に指定されたコパチキ・リット自然公園
ヴァラジュディンの近くにあるオペカは、ドゥブロヴニク近郊のトゥルステノとともに、最も有名な樹木園の一つである。
オオカミ(Canis lupus)は、オオヤマネコとヒグマとともに、クロアチアの3種の厳重に保護された大型肉食動物の1つである。

国立公園と自然公園の合計面積は約5,500 km² であり、国土のほぼ10%に相当する。その他の保護された自然のカテゴリーとしては、特別保護区、地域公園、自然記念物、重要な景観、森林公園と記念碑的公園構成がある。すべての自然保護活動は国家環境・自然保護庁によって管理されている。

特定の保護地域は国際的な自然保護システムにも含まれている。プリトヴィツェ湖と(2017年来)ヴェレビット山の2つのブナの原生林は世界遺産リストに登録されており、ヴェレビット山とムラ・ドラーヴァ地域公園(国境を越えるムラ・ドラーヴァ・ドナウ生物圏保護区の一部)はMAB生物圏保護区の国際ネットワーク(「人間と生物圏」)に属している。更に、コパチュキ・リット、ロニスコ・ポリェ、ネレトヴァ川のデルタ、ツルナ・ムラカとヴラナ湖は、貴重な湿地の国際リスト(ラムサール条約)に登録されている。パプク自然公園はヨーロッパのジオパークネットワークに入っている。

クロアチアが欧州連合に加盟したことにより、保護地域と価値が認められた他のすべての地域が、「ナトゥーラ 2000」土地と海洋地域の生物保護ネットワークの一部となった。

固有の動植物

クロアチアの植物相の特徴は生物に関する多様性(生物多様性)と特異性である。

代表的な植物種の数では、クロアチアはヨーロッパの多くの国を凌ぐ。クロアチアの沿岸地域の異なる気候と位置のために、地中海地域にある植生の組成や外観はヨーロッパ・シベリア地域に属する内陸の低地や山岳地帯に比べかなり異なる様相を呈する。それは森林植生において特に顕著で、他の植物種類にも見られる。

チチュウカイモンクアザラシ(Monachus monachus)は「海の人」とも呼ばれ、世界で最も絶滅の危機にさらされた哺乳類の一種である。
シロエリハゲワシ(Gyps fulvus)は絶滅危惧種であり、ツレス島の2つの鳥類保護区には120以上の営巣中のつがいが生息している。
コウモリ(Chiroptera)は地下洞窟の永住者である。
シュバシコウ(Ciconia ciconia)は、クロアチアに1,100~1,300組の巣がある、厳重保護種である。

生物の多様性とともに、特異性も特徴であり、それはアドリア海の島々とビオコヴォやヴェレビットの山脈に特に多い固有種に反映されている。クロアチアの植物相には8,871の種と亜種があり、或る概算によれば10,000種以上もある。そのうち526種(約6%)が固有種であり、1,088種(約12%)が保護されている。

ラッコ(Enhydra lutris)は保護種である。
ヒグマ(Ursus arctos)、厳重に保護されている大型肉食動物。ヴェレビット山のクテレヴォ村には、事故や密猟により孤児となった子熊のシェルターがある。
ホライモリ(Proteus anguinus)はディナル・カルスト地域の固有種である。
ハンドウイルカ(Tursiops truncatus) は主にロシニ島周辺の海域に生息している。

クロアチアの動物相は、恒久的あるいは一時的に国内に生息している全ての動物種を含む。クロアチアでは、北ヨーロッパの一部の典型的な動物種と、主に地中海西部と東部に生息する動物種の生息域が重複している。

現在認識されているのは、クロアチアの動物相には23,876種・亜種があり、そのうち565種(2.4%) が固有種で、1,624種(6.8%)が保護されている。

オオヤマネコ(Lynx lynx)は、厳重に保護された大型肉食動物であり、ゴルスキ・コタル地方とリカ地方に永く生息している。
デゲニア・ヴェレビティカ(Degenia velebitica)は最も有名な固有種であり、ヴェレビット山脈に生育している。
クロアチアのナデシコ(Dianthus croaticus)はゴルスキ・コタル地方とリカ地方に生育する固有種である。
イリス・クロアティカ(Iris croatica) は、クロアチア北部に生育する固有種である。

ほとんどすべての動物群に固有種が見られ、カルスト地域、アドリア海に流れ込む川と島嶼部に生息する種の中に最も多い。アドリア海のカルスト川の河口には86種の魚類が生息し、そのうち40種は固有種である。カルストの地下の世界は更に多様である。ディナル・カルストの真洞窟性動物の種の数は世界で最も多い(80種)。